二章:ルーズリア

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  「……知らないわ」    しばらく考えて、一言。国の名前、王族の名前、とかなら知っていると答えられるけど、導きの神なんてものは知らない。   「そう、なるほどね」    メモにはペンを走らせず、どこかほっとしたようにコンリは言う。    書かないあたり、大切な質問ではないらしい。    もしくは、忘れない、記憶できるくらい印象が強い質問なのだろう。私にはさっぱりだけど。   「ありがとう。これでいい記事が書けるよ」   「そう。これくらいなら何時でも協力するから。疲れてるとき以外は」   「はは……。ごめんね、どうしても当日に聞きたくて」    感謝と謝罪、一回ずつコンリが軽く頭を下げる。   「あ、そうだ」    そしてすぐ何かに気づき、ポーチを漁り始める。    忙しない子だ。微笑ましくそれを見守っていると、コンリはポーチから小さな箱を出した。   「はい、コレ。 取材のお礼と、一周年記念のお祝い」   「……? 何?」   「ケーキ。偶然にもショートケーキですぜ、姫様」    冗談っぽい口調でコンリは言う。ケーキ……。    ふと、頭に疑問が浮かぶ。   「アルネ。ケーキって二段だったり、丸いでかい形してるわよね? こんなに小さいの?」    城で見るのはもっと大きいサイズなのに、箱は手のひらに乗る程度。こんな大きさはあり得ない……。    まさか罠では?   「姫様、すっかりブルジョワな発言が板につきましたね」    ため息をつくアルネが私に近づき、箱を開ける。    コンリが言った通り、中にショートケーキが二つ入っていた。いつも見る物より小さいけど、一人で食べるならちょうどいいかしら。  
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