二章:ルーズリア

29/29
前へ
/400ページ
次へ
  「ありがとう。 大好物をくれて。記念日も悪くないわね」   「あからさまに怪しんでた癖に、清々しく言うな」    コンリに軽く頭を叩かれる。アルネがムッとした表情をするが、私は少し嬉しかった。    フレンドリーだし、友達ができたみたいだ。   「うへへ」   「姫が叩かれて笑わない」 「姫様、笑い方がいやらしい小悪党です」    一斉にツッコミが――いや、苦情が飛び込んでくる。    自分でも変な声を出したと思う。   「――んじゃ、もう僕は帰るから。今日は戦ったんでしょ? ゆっくり休んでねーっ」    軽く手を挙げるとコンリはマントを翻し、小走りで去っていった。    最後まで明るい子だったわね……。また会えるかしら。      コンリの姿が見えなくなり、アルネがポツリと、   「……もう、そんな時期ですか」    ぼんやりとした……悪く言えば、お年寄りが『もうそんな年齢か』と言うような口調で呟く。   「時期? 記事のための取材って時期があるの?」   「え? 私、何か言いました?」   「これまた露骨な知らんぷりね。……まあいいわ。行きましょ」    歩き出す。アルネは私の横を歩き、ついてくる。いつもの動作、いつもの表情。    私はそんなアルネに安心すると同時に、何か漠然とした疑問を感じたのだった。  
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加