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「ありがとう。
大好物をくれて。記念日も悪くないわね」
「あからさまに怪しんでた癖に、清々しく言うな」
コンリに軽く頭を叩かれる。アルネがムッとした表情をするが、私は少し嬉しかった。
フレンドリーだし、友達ができたみたいだ。
「うへへ」
「姫が叩かれて笑わない」
「姫様、笑い方がいやらしい小悪党です」
一斉にツッコミが――いや、苦情が飛び込んでくる。
自分でも変な声を出したと思う。
「――んじゃ、もう僕は帰るから。今日は戦ったんでしょ? ゆっくり休んでねーっ」
軽く手を挙げるとコンリはマントを翻し、小走りで去っていった。
最後まで明るい子だったわね……。また会えるかしら。
コンリの姿が見えなくなり、アルネがポツリと、
「……もう、そんな時期ですか」
ぼんやりとした……悪く言えば、お年寄りが『もうそんな年齢か』と言うような口調で呟く。
「時期? 記事のための取材って時期があるの?」
「え? 私、何か言いました?」
「これまた露骨な知らんぷりね。……まあいいわ。行きましょ」
歩き出す。アルネは私の横を歩き、ついてくる。いつもの動作、いつもの表情。
私はそんなアルネに安心すると同時に、何か漠然とした疑問を感じたのだった。
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