一章:記憶を失った英雄

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  「相変わらず二人は仲が良さそうだ。アルネ、娘をよろしくな」    メイドに娘を託すのは、果たしていいのだろうか。    アルネは嬉しそうに笑みを浮かべ、私の髪を整えている。   「お任せ下さい。 私が必ずや、ルーフル姫様をお幸せにしてみせます」   「うんうん。 やはり時代はこうだな」    何の時代だ。 私とアルネの二人を見て微笑ましそうに眺める。    父さんは……アレなのだろうか。女の子同士、と言いますか……そんなのが好きなのかな。    ううむ。でも視線は見守るような、少し不安そうなものだと感じる。    まるで試験の結果を確かめる学生みたいな……。   「今は平和な時代だ。……やはり、人の世はこうでなくてはな」    父さんは何かを意味深に呟くと、そのまま演説台へ向かっていった。    
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