一章:記憶を失った英雄

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   アルネは私の前に来ると、誇らしげな笑顔を浮かべ、   「本日は姫様が王国を救って一年経った、記念日でございます」    明るく言い放った。   「記念日……」    ――ああ、なるほど。    通りであんな人数が集まるわけだ。納得すると同時に、私はこれからを考えて憂鬱な気分になった。    私に内緒にした父さんの判断は正解だ。記念日の話を聞いたとき、逃げたくなったから。    私はため息を一つ。   「なるほどね。よく分かったわ。……仕方ないわね」    正直、見せ物にされている感じがするけど……我慢だ。父さんの顔も立てなければ。   「いいのですか? もしアレなら、私と駆け落ちでも」   「却下よ。一人で崖にでも駆けて落ちなさい」    アルネが涙目になった気がするが、無視。幼馴染みとはいえ、メイドを甘やかしてはいけないのだ。    というか、真面目なアルネが駆け落ちなんてする筈もない。きっと冗談だ。  
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