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しかしこの中国の発言を他の国の大使が黙って聞いているはずもなかった。
インドと同じくカシミール地方の領土問題をかかえているパキスタンや、同じように中国との間で領土問題をもっている東南アジア諸国もインドと一緒になって大反発し、国連会議場はまれに見る大混乱に陥った。
結局その混乱を押さえることで手一杯になり、その日の会議は終了となった。
著しい経済成長を遂げてきた中国だったが、近年その傾向は停滞の一途を辿っている。
失業率が増え、ウイグル自治区等での暴動等も絶えず、それに比例して中国共産党に対する国民の不満も増していった。
これに対して共産党が取った対策が、2010年の尖閣諸島での一件だと推測がなされた。
共産党は、
『向けられた不満の先に付いている刃が自分達に危害を加える前に、その矛先を海外に向けてしまえばいい。』
と考えたのだと。
日本政府はそう憶測を立て、今後もこのようなことが繰り返される確率は高いとして警戒を強めていた。
その矢先のカシミールでの事件である。
案の定だと思った国は少なくなかったが、その一方でなぜ尖閣諸島でなど、今までの対外政策で越えなかった一線、すなわち『武力衝突』を自ら踏み越えるような強引な手段に出たのか。
これの理由に関しては、依然として謎のままであった。
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