気付いた恋と嘘。

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ソフトクリームが溶け始め、指に垂れる前に舌先で掬い取る。 味なんか、よくわからなかった。 洋兄の手は、氷を砕いていたけれど、半分程はメロン色の水になっていた。 水音と氷を砕く音を聞きながら、あたしは洋兄の反応を待つ。 「わかんねー……」 洋兄は、はぁと息を吐いて、頭を膝に押しつける。 「じゃあさ、紗由さんに彼氏が出来たらどう?」 あたしの問いで、洋兄は顔を上げる。 しばらくじっとあたしを見つめ、不意に視線を外した。 「……嫌だ」 僅かに頬を染め、子供のように頬を膨らます洋兄の姿は、不謹慎だけど可愛かった。
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