春の終わりと桜。

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息を切らして弓道場に着いたあたしは、胸を押さえながら道場をそっと覗く。 どのクラスも掃除中だから、当たり前だけど誰もいなかった。 ……馬鹿か、あたしは。 自分に呆れて、足の力が抜けてしまった。 道場の壁に寄り掛かりながら、あたしはずるずると地面に座り込んだ。 「巡さんって絶対掃除とかサボらないタイプだろうからなぁ」 「俺がどうかした?」 「え?」 いるはずがないと思ってたその声で、あたしは慌てて立ち上がる。 振り返れば、そこには目を伏せて申し訳なさそうな顔をした巡さんが立っていた。
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