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はじまりは、私が中学生になったばかりの頃。
その時の私は、小さい頃から頼れるお兄ちゃん的な存在だった響が大好きで、いつもついてまわっていたんだ。
たまに面倒そうにしていた響だけれど、それでも私を本当の妹みたいに扱ってくれていた。
――私をかばって大怪我をするまでは。
「大怪我って…」
「よそ見運転をしていた車が、歩道につっこんできたんです。わたしはかすり傷と捻挫くらいですんだんですけど、響は私をかばったせいで……」
「そんなことがあったのか」
呆然と呟く葵センパイの顔色は、すごく悪い。
だけど、あの時の響はもっと悪かったんだ。
アスファルトにじわじわと広がっていく血溜まりを私はきっと一生忘れられない。
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