忘れられない過去

6/31
14697人が本棚に入れています
本棚に追加
/355ページ
葵センパイは、私の手を引いてゆっくり歩いていく。 着いた場所は、二人で一緒にお昼寝をした裏庭。 夕日に染まるそこは、あの時よりどこか寂しげに見えた。 「……葵センパイ。私の話、聞いてもらえますか?」 「ミーコは話して大丈夫なのか?」 葵センパイは、眉を下げながら私の顔をのぞきこんでくる。 私のことを気遣かってくれているのがわかる、心配そうな表情。 葵センパイは、本当に優しいね。 「葵センパイに聞いてもらいたいんです」 ずっと誰にも言えないでいた、私の秘密。 本当は知られるのが怖い。 だけど、葵センパイが全部受け止めるって言ってくれたから――。 「……そっか」 葵センパイは、繋いだままだった手を優しく握りしめてくれる。 その温かさに背中を押されるように、私は口を開いていった。
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!