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葵センパイは、私の手を引いてゆっくり歩いていく。
着いた場所は、二人で一緒にお昼寝をした裏庭。
夕日に染まるそこは、あの時よりどこか寂しげに見えた。
「……葵センパイ。私の話、聞いてもらえますか?」
「ミーコは話して大丈夫なのか?」
葵センパイは、眉を下げながら私の顔をのぞきこんでくる。
私のことを気遣かってくれているのがわかる、心配そうな表情。
葵センパイは、本当に優しいね。
「葵センパイに聞いてもらいたいんです」
ずっと誰にも言えないでいた、私の秘密。
本当は知られるのが怖い。
だけど、葵センパイが全部受け止めるって言ってくれたから――。
「……そっか」
葵センパイは、繋いだままだった手を優しく握りしめてくれる。
その温かさに背中を押されるように、私は口を開いていった。
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