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ヴァプラが片眉をあげて、やや嫌そうに部屋を見渡して見せると、ナフードは気にせず
「狭い方が落ち着くんでな」
などと、飄々と言い返してきた。
「……そういやお前の部屋もこんなだったな……」
お互い将官ともなれば、それなりの邸宅には住んでいる。が、ナフードの居室がいつも足の踏み場もないほど汚いことを思いだし、ヴァプラはこめかみに手を当てた。
彼は片付けるのが苦手なのだ。
二人がまだ下級兵だった頃も、官服のズボンが本棚の上に、上着がなぜかチェストの足の下に挟まっているなどという風景が日常茶飯事だった。
「何を笑ってる」
「ああ、いや、ちょっと昔を思い出しちまってよ」
「昔?」
何の話だ、と首を傾げるナフードに、ヴァプラはくつくつと肩を震わせて笑う。
「お前と同室だった時のだよ」
「……それはまた随分と昔の話だな」
ようやく自分の散らかし癖に思い至ったらしく、今度はナフードが眉をひそめた。ヴァプラはひとしきり笑うと、再びがらくたの山に目を移す。
「で、逆にきれい好きの筈のお前が、なんだってこんなところでがらくた漁りをしてるんだ」
「あー、ちょっと探しもんだよ」
「探し物? 何を探してるんだ」
「ミラっちの双剣だよ。アル坊がキマリスに褒美をとらせたいんだそーだ」
「ミラの双剣? なんでそんなものを」
「なんだかわからねーが、所望されたのがそれなんだと。でもまさかアルディバインをやるわけにゃいかねーだろ」
ふむん、と小さく息を吐き、ナフードもがらくたを見やる。
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