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男達は平九郎が発する雰囲気に呑まれ、言葉も出せない状態に陥っていた。
平九郎は困った様にうなじを掻きながら
「答えが無くばどうしようもないのぅ…」
と苦笑を洩らした。
無論平九郎自身、男達が足元の死体から衣類と装飾物、そして財布を剥ぎ取っている場面を遠目で見ていたので分かっていた事だが…
コレは平九郎なりの情けであった。
生活に窮し、賊へと身を貶める者も存在している故に、ただ己の快楽の為に力を振るう者以外の人間ならば平九郎は軽い裁きで済ますつもりである。
しかし、そうであって欲しいと願う平九郎の思いは見事に砕け散る。
「おうよ!コイツらが不釣り合いな積み荷と身なりをしていたから俺達が貰ってやったんだ!!」
男達の頭領らしき男が笑いながらそう言った。
(…)
平九郎は怒りに震えて居た。元来、平九郎は力に物を言わせて、弱者を虐げる人間が嫌いなのだ。
「今の世の中、力が全てなんだよ!
っつー事でボウズ、その槍と刀、それに有り金と身ぐるみ全部寄越しな♪」
その様子を見て、男は平九郎が畏縮したと勘違いをしたのか、腰に差してあった直刀を抜き、平九郎の頬をペチペチと叩きながら脅迫して来た。
平九郎は強い嫌悪感と吐き気を抑えながら、こう言い放った。
「あくまでも貴様等は力が全てで、強者なら弱者を虐げても良い…そう申すのじゃな?」
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