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「っ!?冗談じゃねぇ!!こんな化け物の相手なんてやってられねぇ!!
お前ら、退散だ!!」
男達が平九郎の並々ならぬ威圧感と殺気に怯み、首魁らしき男の命令を聞き、我先にと退却を始めようとした時…
『うわぁぁぁぁぁぁ!!』
『あちぃぃぃぃぃぃ!!』
『助けてくれぇぇぇ!!』
と男達の遥か後方から別の男達の悲鳴が響き渡り、後方から賊達の仲間らしき男達が大量に走って来た。
こちらに居た男達は事態をすぐに把握出来ず、呆然としていたが…やがてハッと我に返り、逃げて来た男の1人の肩を掴み引き寄せた。
「おい!!一体何があった!?」
立ち直りきれない思考の中で、なんとかそう尋ねた…
引き止められた男は酷く取り乱しながら
「俺達の後ろからいきなり変な男が突っ込んで来て、お頭が斬られた!!さらにそいつは俺達の陣に火を点けやがった!!しかも普通より火の回りが早から、多分官軍に包囲されてる!!」
と一気にまくし立てた。
平九郎と別れ賊の背後に回り込んだ小太郎は賊の陣に忍び込み、指揮官を暗殺した後、周囲に仕掛けておいた火薬に火を点けたのだ。そして、小太郎は賊に扮し、大声で
『お頭が斬られた!!しかも官軍の大軍に囲まれてるぞ!!』
と叫んで回ったのだ。
これこそ小太郎の『策』であった。
前線を平九郎が釘付けにして、全員の注意を平九郎に向けさせている間に、隙を突いて指揮官を暗殺し、火を放った後、さらに『背後を官軍に囲まれた』と嘘の情報を流す事で賊を撹乱し、命からがら前方へ逃げて来た賊を平九郎が残らず討ち取る…と言う地形を生かした殲滅作戦である。
勿論、これは2人の確かな実力とお互いの強固な信頼関係無くして成り立たない策であるが…2人は迷わず決行したのである。
そして平九郎は、この策の仕上げに取り掛かった…だが、小太郎の思い描いた物とは別の結末と異なる結末へと変える為に…
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