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歩き続けて半刻程、平九郎の遥か前方に見知らぬ軍旗が見えた。
(ふむ…数は1000程、しかし軍旗は『馬』…何者であろうか…)
近付いて来る軍を前に平九郎は冷静に軍を分析して居た。
「ほぉ…」
先頭の兵の顔が見える程に近付いた時に、平九郎は思わず感嘆の息を漏らした。
(この者達は良き顔をしておる。
かなりの戦場を渡り歩いた者の目じゃ…)
兵士の顔に迷いの色は無く、動きの1つ1つが洗練されている様子に平九郎は内心舌を巻いた。
「そこの者、何用か?」
先頭の兵士が平九郎に気付き話し掛けた。
平九郎は落ち着き払った様子で
「我が名は平塚平九郎為廣と申します。貴殿等の総大将に申し上げたき事が有り、参上致した。」
と堂々と答えた。
兵士は少々面食らった表情をした後、
「すまぬが馬騰様…我が軍の大将は多忙故にお主のような童に会う暇が無いのだ。
俺が用件を聞く、後で大将にお伝えしよう。」
苦い顔で兵士が告げると、平九郎は内心盛大な舌打ちをした。
(なにやら悔しい気もするのう…)
平九郎は複雑な気持ちだったが、ぐっと飲み込んで続けて言った。
「貴殿等が討伐しようとしている賊徒等を既に儂が討伐して居ても…でござるか?」
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