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半刻後、平九郎は馬騰軍の陣幕へと通されていた。
平九郎は下座に膝を突き、頭を垂れた状態で馬騰の元へと謁見した。
(『馬騰』…確か今から1400年程昔、大陸の涼州の地を治めた名君…いかなる人物であろうや…)
平九郎は平伏した体制のまま冷静に記憶を探り、古の名将との邂逅に心を馳せていた。
「殿…この者が涼州の北に巣食って居た賊『旋鹿党(センロクトウ)』をたった2名にて壊滅させた者の1人、平塚為廣と申す者で御座います。」
平九郎を本陣へ案内した男が上座の馬騰らしき人物に片膝を突きながら、報告をした。
平九郎はそれに習い、左膝を地に突き、頭を下げながら
「平塚平九郎為廣にござる。」
と深々く頭を垂れた。
ザワザワザワ…
平九郎の左右に並ぶ将達は、その報告を聞きとても信じられないのか、一斉に平九郎を値踏みする様に見つめ始めた。
しかし…
スッ…
「皆の者、静まれ。」
上座の男が片手を挙げ、やや低い、穏やかな声で将達をたしなめた。
そして
「見苦しい所をお聞かせ申しました。
どうか顔をお上げくだされ。」
まるで我が家でくつろいで居るような声で、そう言った…
「はっ…なれば失礼致しまする。」
そう平九郎は返答を返すと、ゆっくりと顔を上げて行った…
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