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顔を上げた平九郎は上座に座る馬騰を見据えた。
年は26,7程で柔和で温厚そうな顔付きだが、右の頬の大きな傷痕と鎧の上からでもはっきりと分かる鍛え上げられた肉体から、幾度もの戦場を潜り抜けた歴戦の勇士で有ることを如実に物語って居た。
そして最も印象的だったのが、腰まで届きそうな長さの銀髪だった…
馬騰は平九郎の顔を見、満足そうに大きく頷くと
「平塚殿、今回の旋鹿党の件に感謝致し申す。」
まるで子を慈しむ様な笑顔を浮かべ、深々と頭を下げた。
「「「とっ!!殿!?」」」
家臣達は馬騰の突然の行動に驚愕し、急ぎ戒めようとするが…
「黙れっ!!
本来、涼州の賊を討伐するは、その州を治める我等の仕事ぞ!!
しかし、今回その危険な役目を平塚殿とその友の2人で成し遂げたのだ。
故に儂が頭を下げるのが道理であろう!!」
馬騰はその家臣一同を一喝し、黙らせた。
(義・情に篤く、人を思い、人を惹き付ける…太閣様を思い出すのう…)
平九郎は馬騰の剛毅な器に亡き主、太閣秀吉を暫し重ね合わせた。
「馬騰殿…」
平九郎は確かな確信を抱きながら馬騰に自分の考えを口に出した…
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