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「ほお、これは見事な垣にござるな」
賓客として馬を宛がわれた平九郎の後ろを徒歩で追う小太郎が遠目に見えてきた武威の城壁を見ながら感嘆の息を漏らす
都である洛陽からやや遠く離れた地である武威だ、遠目に見ても世辞には大きいとは言えない。
「うむ、げに善き街であろうな」
平九郎には好感が持てた。
田舎武士の武辺者である平九郎は華やかな都より、質素ではあるが実用的な方が性に合っているからだ
地味ではあるが表面を揃え凹凸をなくしていれば城壁をよじ登る足場にもされないし、土壁は燃えにくく指揮官の腕次第では長丁場の戦にも強い。
更に壁を挟んだ向こう側からは活気のある人の声がする。
これらはひとえに為政者としても馬騰が善政を敷いている証拠だ
「あと少しで我等が本拠に到着致す。賊討伐を行った身、少しむず痒いかもしれないが辛抱なされよ」
「は、馬騰殿、それはどういう───」
「ふむ、どうやらああいうことらしいですな」
足並みを揃えながら気さくに話しかけてきた馬騰に訝しげに尋ね返そうとした刹那、小太郎の指差す先の光景で全てを悟る
武威の城門が開き、数多の民衆が歓声と共に軍を出迎えに出て来ていたからだ
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