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-さすが馬騰様だぁ!
-もう明日から安心して行商に行けるぞ!
-涼州の盟主様ばんざぁぁぁい!!
-涼州ばんざぁぁぁい!
-ん?
-あの武官様は誰じゃろうか
-たしか向かわれる際はおらんかったで韓遂様の部下じゃないかの
「平九郎殿、面が強張っておられますぞ」
「い、いや」
「我等は賊を討伐した身、民の安寧を齎した者として笑んでみせるのが筋でござる」
「そう言われてもだな長殿????」
「何度も申し上げるが今の某は貴殿に仕える乱波。小太郎と呼び捨てくだされ」
取りつく島もない小太郎に平九郎は閉口し、諦めたように強張った笑みを浮かべる
-はぁぁ、なんと厳つい顔立ちをなされる方だべ
-ほんに、こんな歓声の中なんにまるで戦場にいるみてぇな形相だ
-こりゃきっと指折りの猛将に違いねぇ
-うお、わしの孫が泣きだしちまった
「????のう、長ど..小太郎」
「固うござるな、越中殿が出迎えてくれているとでも思いなされ」
「戯れを。あの戦は西の大敗じゃ、儂と同じく既に幽冥の者であろうよ」
落ち込む平九郎などどこ吹く風の小太郎に苦々しく返す。
越中、平塚庄兵衛為景は平九郎の弟で共に関ヶ原に赴いたが、西軍の大谷刑部の手足として戦った平九郎を小早川から守るように布陣していた樽井勢の為景が生きているとは平九郎には嘘でも思えなかった。
平九郎が最後に相手にしたのは小早川の手勢の若武者であり、あの時既に樽井の手勢は須らく玉砕したのだと勘付いてしまったからだ。
自分に過ぎたる弟であったからこそ、満足して死んだであろう為景に生きていてほしいと願うのは己の我儘だと思うからだ。
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