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「皆の者、喜ぶがいい。我等涼州の脅威、旋鹿党は滅んだ」
街を囲う郭をくぐり、さらにその奥の城門をくぐった市街地で馬騰は両手を広げ、高らかに宣言する。
それに呼応するように周りから称賛の声を送っていた民衆から爆ぜるように歓声があがる。
「そして喜ばしいことに、我々は此度の賊討伐で新たな英傑と知り合うことができた。
平塚殿、小太郎殿、共に前へ参られよ」
諦めた様子で下馬し馬騰の前へと来た平九郎の手を取り、周りによく見えるように握って見せる
「皆よく見よ、この若者は平塚平九郎為廣という異国の武芸者で、なんとこの伴の者と二人だけで旋鹿党を壊滅させた大功をなした剛の者であるぞ」
馬騰の大袈裟な対応と民衆から向けられる視線の雨に平九郎はみるみるうちに表情が強張っていくのがわかった。
元来平九郎は世の豪傑と肩を並べるほどの実力を持ちながらも華々しい大功を立て、公の場で称賛されるような経験は皆無であったからだ。
「さらにこの平塚殿、なんと我等の客将としてしばらく戦ってくれると申してくれた。
無論示しをつける為に然るべき相手を用意し、実力を諸将に知らしめる場を設ける故、この者の強さをその目で確かめるがいい。」
「その相手、是非私にお命じくださいませ」
馬騰がそう締めくくるや否や、凛とした声が大衆を貫いて届いた
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