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「くくっ…!」
即座に響いた女の声に堪らず小太郎が噴き出す。
それもそのはず、隣の平九郎は鬼瓦の如き表情のまま瞳だけ悟ったような奇妙な顔をしていたからだ
鬼九郎と異名を取った為廣はなぜか気骨の強い女に縁がある。しかもほぼ全てが武芸者として挑まれるという形でである
「───!」
「っ──!」
平九郎がなんとか声の主へと顔を向けると今度はあんぐりと口を開けて絶句した。普段なら絶対に起こらない平九郎の百面相に遂に小太郎は声もなく腹を抱えて悶絶する
馬騰のように透き通った美しい銀髪を後ろで一つに束ねて腰ほどまで垂らした銀の鎧を身に纏った美しい女であったからだ。
身体は女性特有の丸みを帯びた形だけでなく、鎧の上からでもわかるほど無駄なく引き締まった身体をしており、鍛練を積んだ武芸者特有の精悍さを併せ持っていた
「平塚殿の武勇、私もこの身で知りとうございます。是非私にお申し付けを」
「ふむ」
滑るように馬騰の前に躍り出ると片膝を衝き、名乗り出ると馬騰は顎を撫でる
「誰ぞ、孟起の他に我こそはと思う者はおらぬか」
馬騰が更に声を募るが名乗りはない
「あいわかった、では平塚殿の相手は孟起と致す」
「馬騰殿、それは──」
「よきお考えと存じまする。因幡殿の武勇、存分に各々方に示すことができましょう」
慌てて平九郎が相手を変えてくれと申し出ようとした刹那、人混みの中からよく通る男の声が挙がった
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