クロノス

開始

ピー.ピー.ピー

透明な囲いの中の青年は、表情だけを見れば、ただ疲れて眠っているだけのようだった。

しかし彼の身体にまとわりつく何本ものチューブが、逃れようのない厳しい現実を示していた。

彼は寝息をたてているかもしれなかったが、周りに配置された多数の生命維持装置のようなものの音によってかき消されていた。

ある青年が発すべき言葉もなく、ただ“それ”を見て立ち尽くしていた。

右肩に何かが触れた。

青年は何かが触れたことに気付くのに何秒間かを要した。

そして青年は後ろを振り返り、口を開いた。

「佑介･･････。どうなってるんだ････。」

青年は透明な囲い（ちょうど産まれたての赤ん坊が入れられるような箱の大きいもの）に手を着いて言った。

周りを見渡して見ると、その透明な囲いが、教室ほどの広さの部屋に、何十個も配置されていた。