開始

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男が連れていかれたことと、服部の不気味な笑いで、また一層、室内はシーンとした。 時折、グスッ.グスッ、と誰かが泣いているのが聞こえる。 やはり人間は、わけの分からぬ所に急に入れられると、上手く精神を維持することができないようだ。 先程まで冷静だった佑介も、男が連れていかれたことにより、心にかなりのダメージを負ったようだ。 洋二郎は先程までは呆然としていたが、思考できる余裕ができたのか、周りを見渡しては頭を抱え、周りを見渡しては頭を抱えを繰り返している。 ガチャ 先刻、洋二郎達がこの白い部屋に入るときに、通ったドアが開いた。 ドアの向こうには、服部と際どい格好をした女がいた。 「上野紗季様・・・。こちらにおかけになってお待ちください。」 服部は洋二郎達にもしたように“上野紗季”をエスコートした。 「ハイ・・・・・」 上野紗季はそう服部に言い、洋二郎達が座っている席の列に座った。 「あ、これを。」 服部は上野にも、あの黒い名刺を渡した。 「大事に持ってて下さいね。後から必要になりますから・・・・。」 服部はまた、ふふふと笑った。 ・
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