2 彼岸映し

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今まで過ごしたはずの記憶を黒い視界に映していた。 クリッぷボード一面に貼られた写真のような思い出がそこにあるのに、それは磨りガラスのように霞んでしまっていた。 もう何度も繰り返した、自分の存在の詮索。 自分は雪華であり。 刀であり。 それしかなかったが、不思議と不安はなかった。 まるでつい先日生を受けたように、体はこれからのことを既に受け入れているようだった。 「あっ!アッー!」 そんなへんてこな少女の悲鳴と共に、真っ黒な視界が一気に開けた。 目の前に髪の束が落ちる。 「おぉっ?!」 「だだだ大丈夫!まだ修正きくからっ!大丈夫だょー雪華ちゃん!」 「…。」 少し離れた所で笑い声がする。それを聴いた雪華の散髪をする妖夢が気恥ずかしそうにうなり、震えるハサミが頭に同じテンポで当たる。 「そ、そういえば何か思い出せた雪華ちゃん?」 話題を変えようと、妖夢がきりだす。 「いや、何も思い出せぬ。さっきも考えておったが。」 「んー。ま、まあ百年くらい前のことだしさ。その…。こう言ったら不謹慎かもしれないけど、忘れちゃっててもしかたないよ。ずっと眠ってたんだしさ…。」 「むぅ…。」 「まあ、私はまだそんな長生きしたことないんだけどね…。でも、幽々子様も昔の事は忘れちゃったって言うし…。」 沈黙が続く なにか話題を作ろうと妖夢が口を開きかけた時、 「まったく、情けないのう。私を産んだ親である匠の名も忘れてしまった。親不孝者じゃ。」
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