1 桜花蒼天

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| 「反応なし!」 「むむむ…なんででしょう…。」 珍しく帰りの遅い幽々子がそろそろ気になるのか、妖夢は時々外を見る。 「いや、絶対この刀なんだって!」 「別に疑ってませんよ。ですが本日はもう日も落ちてまいりましたし。藍さんも心配されますよ?」 「やだ!妖夢のご飯たべたい!」 「私は構いませんが…。その…。藍さんが既にそちらに…。」 紫が振り返ると、大きな耳形の帽子。藍色の衣。何よりも9本あるやたら柔軟性の高い狐の尾を持った少女が庭に立ち、妖夢と目が合うと丁寧に一礼した。 「さあ紫様、帰りますよ。年中朝帰りなんて勘弁してください。」 「ちぇー。じゃあ妖夢、刀はおいて行くから、なんかあったら霊夢に見てもらって。」 「霊夢さんですね。わかりました。」 「では妖夢さん、おいとまさせていただきます。幽々子様にもよろしくお伝えください。」 そう言うと紫は、半ば藍に引きずられるように空間の裂け目に消えていった。 「さてと…。」 妖夢は残された刀を手に取る。 魂魄家に代々伝わる家宝がある。短刀の白楼剣、そして長刀の楼観剣。 この楼観剣というのがなかなかの長刀なのだが、この雪華という刀はそれをさらに凌駕していた。 「どんな人が使ってたんだろう。」 そう思うと、不思議と誰でも振るってみたくなるもので…。 台所からおやつに食べるつもりだった白桃を持ち出し、庭に出て桃を外廊下の上に置く。 食べ物を粗末にするつもりはないが、林檎に矢を放つのが許されて、コレはダメということはないだろう。刀もしっかり綺麗にしたし。 何時もの間合い…から気持ち遠めに構え、滑らかにふりぬく。 嫌な手応えがした…。 損じた訳ではない。柔らかい部分と種を絶つ感触。そこまではいい。その後もう一つ手応えがあった。 廊下の柱を一本、半分辺りまで斬っていた。 「あっ…う、うわあぁああ!!?」 いくら間合いが違うといえど、このミスは剣士としてみっともないと、妖夢は半ベソで柱の傷を指で撫でた。 「柱の取り替え、萃香さんにてつだってもらわなきゃ…。」 やはり、扱うべき物は、扱うべき者の手にあるのが一番らしい。桃を食べる用に切るため、妖夢はしょぼくれた背中で台所に戻った。 「(思い出した…。私は切り裂く物…。断ち切る物…。)」
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