2 彼岸映し

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桜の海原を目差して雲を切り裂く。 雪のように流れる花びらが纏わり付き視界を害するので、途中からは階段を徒歩でのぼらなくてはならない。それでも目的地は、自分の神社よりは短い距離しか残っていなかったので、無愛想な巫女は桜を仰ぎながら西行亭を目差すことにした。 「勝手に上がるわよー。」 「ああ、霊夢さん。ようこそいらっしゃいました。」 白髪のボブカットの少女があわてて出迎えた。しかしなぜかハサミを持っている。不思議そうな霊夢の顔に、妖夢は苦笑しチョキチョキと鳴らしてみせた。 「…ナンチャラとハサミは使いようだけど、限界があるし、切れないものがほとんどよ。これからはそれが白楼剣?」 「いえ、そんなつもりじゃ…。お茶をいれてきますので、あちらで休んでください。」 「そうするわ。」 ラフなイメージの霊夢が靴を揃えている姿は、妖夢には少々新鮮だった。 ふすまを開くと桃色の髪をゆらし、柔らかい笑顔で幽々子が緩く手を振ってきた。 「出張サービスを始めた覚えはないんだけどね。ここはいつも涼しいから、来てあげたわよ。」 「桜餅も一年中出るわよぉ?」 「あの子、何でも作れるのね。うちにも来てくれないかしら。」 「(半分)ならあげられるかも。なんてね。」 挨拶は自然と他愛ない会話になる。 幻想郷ではよくあることである。全てではないが、言葉遊びのような一種の嗜みじみたものである。 「一応話はざっくり聞いてるわ、また外来人関係とか。」 「ホントにざっくりね。」 「で、どこにいるの?その子。」 幽々子が指す縁台を覗くと、少女が一人、中庭を眺めていた。 無造作に伸びた黒髪は獣を思わせるほど乱れ、そのうち、左の顔を掠める髪だけが白い色をし、何よりあろうことか頭からは二本の短い角が生えていた。 「え?妖怪?」 「付喪神っていうらしいわ。昨日目覚めたの。ん?産まれたっていうのかしら?」 「へえ珍しい。大人しそうでよかったわ。」 「妖夢ったら妹みたいに面倒見て―あ、噂をすれば…。」 部屋に入って来て、突然話を振られた妖夢は首を傾げるが霊夢になんでもないと手をふられた。 お茶と一緒に大福を丁寧に二人の前に置く。 幽々子の予想とはちがったが、それでも心底幸せそうだった。
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