2 彼岸映し

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「貴女の分は?」 「私は結構です。ちょっと、やる事がありまして。」 「雪華ちゃんのおぐしを整えてあげるのよね~。」 そう補足した幽々子は二つ目の大福を頬張っていた。 「へぇ、雪華っていうの。覚え易くていいわ。それにしても妖夢、貴女髪きれるの?」 「何をいいます。この魂魄妖夢。切れない物などほとんどありません。」 「同じ髪型になったりしてね。」 「そしたら白妖夢、黒妖夢で呼ばなきゃね~。」 そう二人が茶化すと、妖夢は白い頬をそれこそ大福のように膨らまし唸っていた。 「ぐぬぬぬ…っ、こっこうなったら実力で証明するまでです!みててください二人共!魂魄家に伝わる剪定術を見せて差し上げます!いざ散髪!!」 気合いを入れるため、力いっぱい腕を回しながら妖夢は居間を出て行った。 「剪定って…。可愛いわね。」 霊夢の一言を肯定するように幽々子は長い袖で口元を隠しながら笑った。 けして馬鹿にしている訳ではなく、彼女はいつもただ一生懸命で、ちょっぴり不器用で裏表がない、 そんな姿をだれもが愛しく思い、妖夢を可愛がるのだった。 「あの雪華っていう子は、ここに留まるのかしら?活動拠点把握しとかないと、何か起きた時特定できないと厄介だからね。万年行方不明は紫だけで十分よまったく。」 霊夢がため息を漏らすと、吐いた分より多めにお茶を啜った。 「多分ね。またあの人、何か面白い事考えてるのかしらね。」 「勘弁してよ…。」 「あ゙っ!!」 縁台の方から妖夢の変な悲鳴が聞こえた。どうやらなかなか愉快な事になっているようだ。主に雪華の髪型が。 「そういえば、結局どうだったの?あの真っ赤なお月様。」 そう切り出した幽々子に霊夢はだらだらと手を振ってみせた。 「ああ、あれね。よくわかんない。私はまたあの紅魔のお嬢様の仕業だと踏んでたんだけどね、茶化すみたいに曖昧な事しか言わないのよ。そういう一週間もあるわよーとか。ま、あの調子だと関係ないみたいね。妖怪達にも異常ないし。」 先週起きた現象。一週間、正確には5日間。幻想郷に赤い月が昇った。 古来より赤い月は不吉の前触れなどと言われており、紅魔地下図書館のパチュリー・ノーレッジ曰く、 一部の(陰)の性質を持っ存在の感情や身体などに大きな起伏をもたらすという。
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