20人が本棚に入れています
本棚に追加
補足で、あくまで書物上の事だと釘を刺されたのだが、もしもが起こってからでは、また毎度のように骨を折ることになる。
虱潰しに心当たりを当たりに当たり。特に何事もなく、結局原因は不明。
まあ平和に越した事はないと霊夢は鼻で笑う。
「それで?貴方の方はどうなの?」
そう切りかえされ、幽々子は大福を片手に首をかしげた。
「何が?あ~。八目鰻丼の自己ベスト?あれから伸びてないわぁ。53杯でお腹一杯。」
幸せそうにお腹を叩く姿に、霊夢はただ苦笑した。
「違うわよ、桜、昨日も見に行ってたんでしょ?」
「あ…。桜…ね。」
霊夢は見た。いつもの暖かい笑みを讃えた表情の向こう側を。
小さく開いた口。
射貫くように繋がる目線。直後、逃げ場を探すように視線は反れ、またいつもの笑みをたたえた。
一瞬だった。
「うん、奇麗だった。贅沢ね、私。毎日独り占めしてるなんて…。」
「ふーん…。貴方もよく飽きないわね。」
「好きだから、桜。」
「…。」
「…はぁ。もう吹っ切れたつもりなんだけどね。よわいね、私…。」
いつもより眉がハの字の笑みをこぼす。
見兼ねた霊夢は、食べようとした大福を幽々子のかえしに載せた。
ほうけたように顔を上げる幽々子に、眉を上げてみせた。
「やめなさいよそんな顔、らしくない。私は慰める事もできないし、相談相手にも向いてないわ。でもいつものあなたを知ってるから、(いつもどうり)に戻す事は出来るわ。だからいつもどうり、美味しい物食べてニコニコしてなさい。ほれっ、ほれほれっ!」
二つ、三つと幽々子のかえしに大福を積み上げ、思わず笑みがこぼれた。
「…うん。美味しい。」
「よろしい。いつもその顔してなさい――」
「(アッー!!)」
「――あの子の為にもね。」
お茶を啜り、自分で言っておいてほてった顔を隠す為そっぽを向いた霊夢は見なかったが、いや、見なくても、そこにいつもどうりの笑顔があるとなんとなく感じた。
しかし実際は、もっと――。
最初のコメントを投稿しよう!