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「じゃ、これはもらっていくね。」
紫はえらく縦長な桐箱を担ぎ、重くないかと気遣うタエたちに箱を軽く叩いて見せた。
「気をつけて。また、お茶でも飲みに来てよ。そんで聞かせて、あっちのはなし。」
「うん、そのうちね。じゃ。」
タエたちも、出送りのため紫のあとに続いて店の入口に立ったが、すでに紫の姿は無かった。
「ホントによかったのか?ありゃお前の…」
「いいのよ、この日のためにとっといたんだから、」
驚く店主を尻目に、相変わらずとうれしそうなタエは店へ入っていった。
「友達にしてはずいぶんと歳が離れてたが、霊能者か何かか?」
歳が離れてる、というのは間違いではないが間違いである。タエが会った時には変わらずあの歳頃だったし。少し自分より年上ぐらいだった。それから、いつしかタエは紫を追い越し、今では母と娘のような外見になったのだった。
「私がまだ16の時ね、」
タエの信じがたいいきさつ話しはそんな風に始まった。
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