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私たちが月より地上に降り立ってから数日の月日が流れた。私はお師匠様こと八意永琳の助手として、ここ永遠亭に住ませてもらっている。そして今、私はそのお師匠様に呼び出されて縁側の廊下を一人で歩いていた。
一体なんだろう。少なくとも怒られるようなことはしていない……はず。
「昨日の薬の配合のこと? 今朝の料理の味付け?」
それとも――……。私の中で一番思い出したくない記憶が頭を過ぎった。思い出すだけで……嫌な記憶。
「月でのこと……じゃないよね?」
不安を胸に私はお師匠様の部屋の扉を開いた。部屋の中では様々な薬品の匂いが混じり合い異臭を放っている。初めの頃は部屋に入るだけで倒れていた私だが何度も部屋を訪れるうちに、なんとか慣れることが出来た。
「あら鈴仙、早かったわね」
声のする方に体を向けるとお師匠様は白衣姿で立っていた。そしてその手には試験管が一つ握られていて、中には緑色の液体が入っていた。あれは以前に私も作ったことがある。確か傷薬。
しかし蓬莱人はそもそも傷など関係ないのだからその薬は十中八九、私用だ。
「お呼びですか、お師匠様」
私がそう言うとお師匠様は試験管を専用の台に置いてから呟いた。
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