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そしてようやく、私は辿り着いた。
敵の波長が集まるその場所は竹が少なくなっていた。一見、先程私がいた場所と見分けがつかない。そしてそこにいたのは――。
「兎?」
白い兎が数羽見えた。しかしその耳には先程まで投げられていた竹筒爆弾が挟まれていた。――なんと器用な、って関心している場合じゃない! 耳に挟まれていた竹筒には既に火が点いていた。しかし私の登場により怯えた兎は投げるのを忘れて立ち尽くしていた。
「ああ、もうっ!」
私はその兎の足元に向かって弾を撃った。それにより耳に挟んだ爆弾を落としてその兎は逃げていった。ついでにその周囲の兎達も一目散に逃げていくのが見えた。
「はぁ……」
不意に溜息が出た。流石にもう兎を見捨てたりはしたくないよね……。私は辺りを見渡してもう逃げ遅れがいないか確認した後、静かになった空間を壊すように口を開いた。
「いい加減出てきなさい! 住処であるここなら罠も仕掛けられないし、無闇に爆弾も使えないでしょ!」
私の言葉が空に木霊した。これで集中砲火を食らったら私は馬鹿だ。
「不思議だねぇ、あんたには敵の位置がわかるのかい?」
そう言って暗闇から出てきたのは、これまた兎だった。といっても兎耳が付いているだけで見た目は小さな子供だった。
「降参だ」
そう言って両手を挙げてきた。
「あんたの思惑通りここでは派手に暴れられない」
「もう攻撃しない?」
銃を構えたまま私はそう言った。
「ああ」
その兎はそう軽く答えてみせた。
「だからあんたもあたし等に攻撃しないでくれ。兎は臆病なんでね」
「わかった」
どうやらお互い無駄な戦闘は避けたかったみたいだ。
「なら」
そう言って手を差し出してきた。交渉成立の握手だろう。私はゆっくりと歩いてその兎に近づいた。――――えっ!?
急に足場の感覚がなくなり私の体は地中へと吸い込まれた。これは――。
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