まるでさながら

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目が覚めたら私は繭の中にいた。何事かと思い必死に繭からでようとする。 しかし足掻くたびに、繭はまるで私を嘲笑うかのように、より強固により強力な糸を私に絡みつける。 段々現実が見えるようになって来た私は両の足が繭の糸で絡められている光景を淡々と眺め、まるでカフカの変身のやうぢゃないか。一体私は何になるのだろうか。と思えるようにまでなっていた。繭の中で孵化をまつ幼虫としての私はどのようなものだったのかと思いを馳せる。 齢は19。身分は無職。現在療養の為引越しの最中。ただただ平穏な日々を食べるために吐き、吐くために食べる。と言われた古代ローマの様に享受しているだけの人間である。 それくらいしか、いや、この程度に自分の過去を程良く纏めながら私の体を見ると、糸はすでに胸の辺りに絡みつき、身動きがとれない様になっていた。私はなんとか首を動かし、繭の壁の一番薄いところに視線を映す。そこからなら外の世界が見えるのだ。 空が見えるかな。と呟きながら移した視線の先には、まるで般若いや、この場合は鬼子母神であろう形相で、子を取り返そうと、繭を壊さんとする母親の姿があった。 あゝ、母と云ふものは変わらんとする子を自分の手の中にいつまでも置いておこうとするものなのであろうか。しかし母よ。この繭は決して壊すことはできないだろうよ。と呟き、私は眼を閉じる。 なんとか繭の薄い場所から子をみた母が見たものとは、繭に包まれて眠る我が子の姿であった。
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