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「ところでギンはお金あるの?」
家具屋にむかう道すがら抱っこしているペンギンのギンに問い掛ける。
「当たり前だ。オレ様はこう見えても堅実家だからな。貯めていた宝石を売ってお金はちゃんと用意してある」
「さいですか」
ギンの新たな一面というかやっぱり鳥は光り物が好きなのかな……?
そんなことを考えているうちに目的地の高級家具屋に辿り着く。
「いらっしゃいませ」
入り口にいる店員は顔を上げてわたしたちを一瞥してから少しばかり怪訝な表情を浮かべ、
「お客様には大変申し訳ありませんがペット同伴でのご入店は──」
店員がみなまで言うより早くギンがかみつく。
「おい、誰がペットだって? 店員の兄ちゃんよ、オレ様がペンギンだからって舐めてんのか?!」
「──し、失礼をいたしました」
「ふん、わかりゃいいんだよ」
なんだかチンピラみたい……。
「小娘いま失礼な事思ったな?」
「え? 思ってないよ。それより、何を買うの?」
うわ~、スルドい。
「まあいい。まずは書棚からだ」
「うん、わかった。書棚だね」
先程の店員に売り場を聞きひとまず書棚を扱っている区画へ移動する。
「うーん、なんかイマイチ……」
あれから書棚やいくつかの家具を選びあとはギンが座るソファーを選ぶだけなのだが、なにやらギンにはこだわりがあるらしく選びあぐねいている。
「まだ決まらないの?」
「ああ、どれもこれも『ふかふか感』がちょっと……」
「えー、そうかな? これなんかとってもふかふかでいいと思うんだけど?」
近くにあるディスプレイ用のソファーに座ると程よいふかふか感がある。
「だがな、こう……小娘に抱っこしてもらっている時に感じる『ふかふか感』と比べると──」
えっと、それって──
「……ななな、なに言ってるのよギン。とにかく、もうこれでいいよね!」
「なんだ?! いきなり大声だしてどうした?」
「どうした?」じゃないっ!!
「これでいいよね!!」
「あ、ああ。これ以上のやつはないみたいだし仕方ねえな」
「ほら、決めたらとっとと支払いを済ませる!」
ギンに有無を言わせないようキッと睨む。
「小娘、なんか変だぞ」
そう言いつつ渋々とレジカウンターにむかうギン。
うぅ、なんかどっと疲れた……
~最高のふかふか~🐧おしまい🐧
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