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「よし、花見に行こう!」
『は?』
間の抜けた言葉をハモらせるわたしとユウ。
のどかな春の昼下がり。
幼馴染みのライが何の脈絡もなく唐突にそう言い出した。
「だから、花見だよ」
「いや、花見はわかったが何故に?」
「春だから♪」
ユウの問いに屈託のない笑顔で単純明快な答えを返すライ。
「それで何処の花を見に行くの? 郊外にある花見スポットは花見客でいっぱいいっぱいだと思うけど?」
わたしの問いにライは待ってましたと言わんばりの笑顔を張りつけてこう述べた。
「ルリアさんからとっておきの花見スポットを教えてもらったんだ」
お姉ちゃんから?
だとすると──あそこかっ!
「街からはあまり離れてはないんだけど滅多に人が訪れない場所なんだって。道順はリィムが知ってる言ってた」
──やっぱり。
小さい頃、お姉ちゃんと一緒に一日かがりでようやく辿り着いた場所。
あれ以来、毎年お姉ちゃんと一緒に花見に行っていたが今年はお姉ちゃんが妊娠中だから行かないでいた。
「それじゃ、明日決行ね!」
どうやら、わたしが思い出にひたっている間に話はまとまったというかライの中で自己完結しかつそれはわたしたち全員の総意になっていた。
──で、翌日。
「全員そろったわね。それじゃ、レッツらGo~♪」
ライの元気な号令の下、わたしたちは花見に出発する。
街から街道にでるまでの間、これといって特筆することはなかった。
いわゆる平穏無事。
しかし、街道にでて出発時からライが抱っこしていたギンをわたしが抱っこしてから些かユウが不機嫌オーラを漂わせ始めた。
「なあ、ギン。お前、立派な足があるのになんで歩かないんだ?」
「はっ、何言ってやがんだ小僧。人鳥の歩幅がどれだけ狭いかわかってんのか? それとも──」
などという微笑ましい(?)会話があったが、それから小一時間ほど歩き街道の途中にある枝道に入る。
そして、ほどなくをして目的地の桜の樹の天辺と手前の林道が見えてきた。
「いい? 二人とも。この先の林道は魔術迷路(マジックメイズ)になってるから、わたしの通った後にしっかり付いてきてね。でないと迷って面倒なことになるから」
……。
…………。
あれ? 返事がない。
「二人とも、ダッシュで行っちまったぞ」
………………はぁ。
~次回に続く~
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