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迷っていた二人となんとか合流して林道を抜けたその先にソレはあった。
荘厳なる佇まいで見る者すべてを圧倒させる巨大な桜の樹。
微風に吹かれ花弁が舞う光景はあまりにも美しすぎて時が経つのを忘れてしまいそうだった。
少しの間、みんなでその絶景にひたり、それから桜の花びらの絨毯の上で少し遅めのお弁当を食べた。
「なんだか贅沢だよな、こういうのって」
お弁当を食べたあと、わたしたちはただ何をするでもなく桜を眺めていた。
それだけで充分だった。
「そうだね」
ユウの言うとおり、これはまさに贅沢。
桜の花びらの絨毯の上に寝転がり視界を埋めつかさんばかりの桜を愛でる。
「確かにこれは贅沢だけど、もっと贅沢なことがあるのをあたし知ってる」
「これ以上の贅沢があるのか?」
ライはユウの問いに対して最上級の笑みで答える。
「この桜の樹をバックにリィムの生ライブ♪」
「おおっ! それいいね! 最高の桜に最高の歌声──なんたるぜ・い・た・く♪」
「でしょ♪」
どうやらこれはひとつ歌声を披露しなきゃいなくなったかな?
まあ、こんな素敵な場所で唄えるだなんて願ってもないこと。
聞こえる音は風に揺れる木々のざわめき。
わたしは桜の樹を背に観客たる二人と一羽を見据えてから深呼吸ひとつ。
そして──旋律を紡ぐ。
──空から降り注ぐ優しさが
目覚めの時 告げる
草木は芽吹き 花咲かせ
世界を彩る──
ふと強めの風が吹いた。
その風はまるで意図したかのように地面に積もる桜の花びらを舞い上げる。
それは自然からの最高の演出だった。
唄いだす前に魔術での効果演出をしようと思っていたがその必要はなくなったようだ。
そして、わたしはその幻想的ともいえる光景の中で旋律を奏でた────
~桜舞う下で~🐧おしまい🐧
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