Chapter1,決行当日

3/5
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「急に後ろに居るからビックリしちゃいましたよー」 「多分そうだろうなぁ、て思ったら驚かしたくなっちゃったんですよ」 「違ったらどーするつもりでいたんです?」 「その時はその時に考えようかなと」 「奈倉さんって意外にチャレンジャー」 けらけらと笑いながら供花は言った 「じゃあ行きますか。供花さん」 すっ…と手を差し出す 彼女は戸惑う様に俺の顔を見た 「今だけで良いので、供花さんの特別な人に成らせて下さい」 「な…奈倉さん…」 打算はあったが、それ以上に純粋に彼女との祭りを楽しみたかった 「……ありがとう…ございます…」 僅かに俯きながら 彼女は嬉しそうに笑った ************************ 「花火が始まる前に移動しますから、しっかり楽しんで下さいね」 「はい!……でも、夏祭りなんて、初めて来たのでリードしてくださいね」 「そうなんですか?」 「はい…」 ほんのすこしだけ 寂しそうな顔になる 「だけどっ」 けれど直ぐに花が咲くような笑顔になる 「最初で最後の夏祭りが奈倉さんとで嬉しいですっ」 「…俺も嬉しいよ」 「はい?」 呟いた声は届かなかったらしい 「それは嬉しいですね、って言ったんですよ」 ――俺が素を出してどうすんだよ… 「エスコート、させてもらいます」 「お願いします、です」 お互いに顔を合わせて、打算無く笑いあった
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!