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「急に後ろに居るからビックリしちゃいましたよー」
「多分そうだろうなぁ、て思ったら驚かしたくなっちゃったんですよ」
「違ったらどーするつもりでいたんです?」
「その時はその時に考えようかなと」
「奈倉さんって意外にチャレンジャー」
けらけらと笑いながら供花は言った
「じゃあ行きますか。供花さん」
すっ…と手を差し出す
彼女は戸惑う様に俺の顔を見た
「今だけで良いので、供花さんの特別な人に成らせて下さい」
「な…奈倉さん…」
打算はあったが、それ以上に純粋に彼女との祭りを楽しみたかった
「……ありがとう…ございます…」
僅かに俯きながら
彼女は嬉しそうに笑った
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「花火が始まる前に移動しますから、しっかり楽しんで下さいね」
「はい!……でも、夏祭りなんて、初めて来たのでリードしてくださいね」
「そうなんですか?」
「はい…」
ほんのすこしだけ
寂しそうな顔になる
「だけどっ」
けれど直ぐに花が咲くような笑顔になる
「最初で最後の夏祭りが奈倉さんとで嬉しいですっ」
「…俺も嬉しいよ」
「はい?」
呟いた声は届かなかったらしい
「それは嬉しいですね、って言ったんですよ」
――俺が素を出してどうすんだよ…
「エスコート、させてもらいます」
「お願いします、です」
お互いに顔を合わせて、打算無く笑いあった
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