53人が本棚に入れています
本棚に追加
「供花さん高いところ好きなんですか?」
「大好きですー」
俯瞰からの落下死
それが彼女が望んだ死に方だった
「高いところに行くと、にんげんがすっごく小さく見えるから」
「そうですね」
「それに、私のおとーさんとおかーさんも高いところから落ちて死んじゃったから……おんなじ死にかたをしたら、ちゃんと家族になれるかなーって」
「家族になれる?」
妙な言い方に思わず素で返した
「確かに血は繋がってるけど、ただそれだけで、家族とかじゃなかったんです」
僅かにかいま見えた彼女の家庭事情
「……あ、ここです」
「いかにも!って感じですねー」
古ぼけた廃ビル
予め鍵は壊しておいた扉がすんなりと開いて、四角い真っ黒な闇が俺達を迎えた
「足元大丈夫ですか?」
「奈倉さんがエスコートしてくれてるから大丈夫ですよー?」
怖くないのだろうか
あっけらかんと話す彼女からは何の感情も感じられない
「ここから花火って見えるんですか?」
「はい。見えますよ」
「花火、二人締めですね」
「……」
一瞬、彼女の表情が曇った
「さ、着きましたよ」
「はいっ」
重い扉を開くために、繋いでいた手を放す
それを俺は後悔する羽目になるとは知らずに
最初のコメントを投稿しよう!