再会のキャンパス

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「あっ…」 講義の終了時間からしてギリギリだと思っていたが、 今日の研究会への参加は一歩遅れてしまった。 入り口に、 『打ち止め』 の札がかかっている。 この札がかかっているのが満員の合図だ。 (この辺が横川教授のセンスらしいのだが…僕にはよくわからない) 入り口でどうしようかなと思っていたら、 フワッ。 懐かしい草原の風を感じた。 今日は草原に花が咲いている。 後ろを振り向くと、サラッとなびく女の人の髪の毛が目に入る。 えっ? 先生? まさか。な。 僕の知っているやよい先生とは全く雰囲気が違う。 肩までの髪がキラキラと眩しい。 ここの学生だろうか? 顔はチラッと見えただけだけど、 あんなにキレイな人いたかな? でもこの風は、この草原を感じる風をくれるのは… そんな事を思っていると、その女の人は横川教授の準備室に入っていった。 「人をパシリにしないでよね」 えっ?この声はやっぱり、 やよい先生だ! どうして先生が教授の準備室に? 「どうせ暇だろう。クビになったのだし」 続けて教授の声。 なんだろう。とても二人は親しいようだが。 「暇でもないし、クビじゃなし」 「ウチの鍵はお前と私しかもっていない。仕方がないだろう」 「仕方ないって。鍵、返すって言ってるでしょ。私はウチに帰らないんだから」 「ハッ! 薄情な娘だな。独り身の父親にもしもの事があったらどうする」 「もしもの事?そんな事があったらうれしくて踊るわよ」 …横川教授とやよい先生は親子だったのか。 そうか横川教授に懐かしさを感じたのは、 やよい先生に似ていたからだ。 こんな単純な事になんで気が付かなかったのだろう。 まあ気付いたとしても、どうしようもないけれど。
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