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言い争いを楽しんでいるような二人の攻防がしばらく続き、
「あっ、時間だな」
横川教授がそう言いながら準備室から出て来た。
僕の姿が目に入ったようだが、
『打ち止め』の札を見て、
「残念!」
と言いながら、研究室の方へ入っていった。
「かーっっ。また逃げられた」
準備室の中からやよい先生の声が聞こえる。
えっ。どうしよう。
僕は慌てて準備室の前を通り過ぎる。
パタリ。
背中で人が出て来た気配がする。
僕とは反対方向に歩いて行く気配を感じ、
僕は振り向いた。
と同時にやよい先生も振り向いていた。
ニカッと満面の笑み。
いたずらっ子のようなその笑顔に、
なんて言うのだろう“女性らしさ”がプラスされて、
とても綺麗だった。
「袴田聡くん。だよね」
僕は一瞬呆然とし、
「…はい」
1拍おくれて返事をした。
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