再会のキャンパス

6/17

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「お嬢さん。いらしてたんですね。ごきげんよう」 先輩は今までに見たことがないカチコチぶりになった。 「お嬢さんも、ごきげんようもやめなさいと言っているでしょう」 「はっ、はい。すみません」 先輩は、 やよい先生を怖がっているように見えるのだが。 そんな二人の様子を見て、 僕はよくわからないモヤモヤイライラした気持ちが消え、 なんだかホッとしていた。 「おい。袴田。お前お嬢さんと知り合いなのか?」 先輩が小声で僕に聞いて来る。 「はあ…まあ」 「袴田くんは私の教え子なの」 やよい先生は僕の返事とかぶる位にそう言う。 「えっ? お嬢さんが教えていたのは女子高じゃあ…」 不思議そうに言う先輩。 へえ。やよい先生は女子高の先生なんだ。 「その前の教え子」 「はあ…」 不思議そうに頭をひねる先輩は無視して、 やよい先生は僕の腕を取る。 「打ち止めだから時間空いているんだよね」 「えっ? あっはい。まあ」 「前から構内を見てみたかったんだ。案内してね」 僕の返事は待たれない。 呆然としている先輩を後にし、 僕はやよい先生に連れて行かれた。 大学の構内に入るには、一度建物の外に出る。 外に出るとフワっと風が吹いて来た。 やよい先生の方から草原の風が吹いて来る。 僕は思わず目を閉じて、 高校の時のように草原の風を全身に浴びた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加