初恋 ?

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何故だろう。 やよい先生は僕を気にかけて見てくれている気がする。 フッ。気のせいだな。 体育の授業を見学しているのは僕だけだもの。 それが気になるのだろう。 今日は競技場で走り高跳びの授業だった。 僕は教室に残るつもりだったが、 やよい先生が全員に見て欲しいという事で、僕も競技場まで行く事になった。 僕は仕方なしに行く感じになったけど、本当はとても行きたかった。 やよい先生は走り高跳びの選手だったからだ。 先生が飛ぶ姿はどうしたって見たい。 うれしい気持ちを隠したくて、 わざとつまらなそうな顔をした。 そんな自分が嫌になっていたのに、 やよい先生はそんな僕をおもしろそうに見ていた。 不思議な感じだった。 同情されるような目は嫌いで、 そう見られるのは慣れているけれど、 おもしろそうな目で見られるのは初めてだった。 「競技場まで歩くのなんて全然平気でしょ?」 「はい」 これが僕とやよい先生がかわした始めての会話だった。 ドキ。ドキ。 またこの鼓動だ。 でも、 「甘ったれ」 誰に言う訳でなく、先生がつぶやいた。 …。 きっと僕の事だ。 そんな風に思われていたんだ。 悲しい気分になって顔を上げると、 先生は僕を見ていて、 ニカっと笑った。 今まで見たことがない、 いたずらっ子のような顔だった。 僕は驚いてどうして良いのかわからなくなった。 「鳩が豆鉄砲くらったような顔してるよ」 そう僕の耳元で先生がささやく。 なんだ?この感じは。 不思議と気分は良くなったけれど。
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