私がオムライスを食べられない理由

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 小さい頃、私は山の方に住んでいた。両親に祖父母、家族五人で穏やかな暮らしを営んでいた。  しかし近所に私以外に子供らしい子供はいなかった。学校に行けば友達はいるが、終わってしまえば誰もいない。テレビはあったが見れる時間が限られていて、一人遊びが得意な子供でもなかった。  そんな私の遊び相手になってくれたのが、もう少し山に行ったところにある屋敷に住んでいる人だった。  私は「お兄さん」と呼んでいたが、実際のところは分からない。いつも群青色のフードを被っていて、口元以外は見えなかったから。声はしわがれていて老人のようなのに、長い袖から時折見える指は子供のようにふっくらとしていた。  その人は私の来訪を歓迎してはたくさんのお話と料理で迎えてくれた。お話は怖いものが多かったけれど、料理はとても美味しいし、何より優しかったから、私はその人が大好きだった。
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