第45話 惨劇の始まり

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「聞いていたよね…僕も行かないと…肩をかしてもらえるかな…」 麻琴は身体を寄せ、僕の腕の下にもぐりこむ。 (敬子さんを……守らないと……) こう言ったら変だが、彼女とは何度かキスをする機会があった。 子供じみた発想だが、損をしたとは思われたくない。 今までのキスが無駄ではなく、それに値する男だと思われたかった 『いつか…好きな娘ができたら、その娘と素敵なキスの思い出をつくりなさい』 そう言った彼女。 今日彼女が死ぬとしたなら、そんな彼女の最後のキスの相手が僕ならば、湯の中でのキスが彼女の最後のキスとなるならば、僕は死んでも彼女を守らなければならなかった。 (あんただって…同じだ…) 僕は暗闇に目を据え、麻琴の肩をかりて歩き始めた。
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