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「聞いていたよね…僕も行かないと…肩をかしてもらえるかな…」
麻琴は身体を寄せ、僕の腕の下にもぐりこむ。
(敬子さんを……守らないと……)
こう言ったら変だが、彼女とは何度かキスをする機会があった。
子供じみた発想だが、損をしたとは思われたくない。
今までのキスが無駄ではなく、それに値する男だと思われたかった
『いつか…好きな娘ができたら、その娘と素敵なキスの思い出をつくりなさい』
そう言った彼女。
今日彼女が死ぬとしたなら、そんな彼女の最後のキスの相手が僕ならば、湯の中でのキスが彼女の最後のキスとなるならば、僕は死んでも彼女を守らなければならなかった。
(あんただって…同じだ…)
僕は暗闇に目を据え、麻琴の肩をかりて歩き始めた。
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