第47話 反撃

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【迷走中の三人称】 冥府への道筋を断っただけでは完全ではない。時狂人は百過刀を一閃させる。 幾年の間、幾十という鬼の血を吸ってきた薙刀が、脆くもガラスのように砕けた。 この時、目の前の敵に集中していた冥府の武器所有者らは、初めて真紀とカズマの劣勢を知る。 だが、夏奈子は違った。 望月の背中から次なる動きを予測し、裾の移動する床まで脚を伸ばす。普段なら刹那の連続であり、呼吸すら適わぬ間であるが、重傷の望月は動きに精彩さを欠いており、間に多少のタイムラグがある。 そのわずかな時間を、夏奈子は出来うる限りの情報を取り入れる間として使っていた。周囲の状況を把握し、戦いに役立てる。全ては望月を生かすためであり、その目は真紀の不自然な脚の運びを見逃さなかった。 まるで、わざとカズマの動きを封じ、薙刀を砕かせたように見えた 同じく、珠子の目も分厚い眼鏡の奥で真紀の脚へと向けられていた。
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