第47話 反撃

12/61
前へ
/1157ページ
次へ
「それは…それこそ判断をくもらせる材料になるんじゃないか?」 見えぬツタが膝まで沈んだ身体を絡め取るように、呪縛が強くなる 夏奈子は艶やかなピンク色の唇をわずかに開き、後ろから俺の肩に頭を乗せ、俺の唇に唇を重ねた。 舌が熱を帯びた指輪を押し出し、その後も唇は離れない。 「こんな時に呑気なものね……」 不意に聞こえたその声に、重ねた唇が離れる。 夏奈子は不快な表情をし、後ろを振り返る。 薄くなりはじめた塵の中から樹里が姿を現す。その横には柄の長いハンマーを杖代わりにし、血の滲む腹を押さえている慶岳がいた。 小池と同じ傷。小池は立てなかったが、慶岳は立っている。 バンダナの下から覗く眼はいまだ鋭く、戦意を失っていない。 (化け物だな……) 俺は指輪を手の平に吐き出し、ポケットにしまい込む。 「樹里、慶岳、俺を引き上げてくれ」 樹里が目の端を吊り上げる。 「なに、その頼み方?」 「悪かった。なら……」 俺が丁寧に言い直と、二人は左右に分かれて俺を腐泥門から引き上げた。 俺は息つく間も惜しみ、皆の顔を見回す。 「これから出口へ向かおう。襟引鬼が出口にいない可能性がある」
/1157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15430人が本棚に入れています
本棚に追加