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「夕霧、今度は逃がさねえ」
燃え立つような髪の鬼はひどく嬉しそうに言う。
「夕霧夕霧ってウッサイわね!私は真紀よ!」
「だが、俺のことは覚えているはずだ。受け継いだ呪術に俺への憎しみが刻まれているだろ?」
両角鬼、京を騒がせた鬼であり、若き武士の裾を踏み、夕霧がその短い生涯を通して戦った宿敵。あまりに有名であり、記憶でなく知識として知っている。
ただ、この鬼を見ていると向かっ腹が立って仕方がない。
これが呪術に刻まれた夕霧の記憶というなら、そうなのかもしれない。
「確かに私は夕霧系の姫よ。だったら、あんたと夕霧の千年来の決着、私が今ここで着けてやろうじゃない」
「涙が出るほどうれしいぜ。万が一にも俺が負けることはありえねえが、お前に斬られるなら本望だ」
「斬るのはカズマよ。カズマ、やるわよ」
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