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カズマは苦笑しながら私を振り返り、火傷を負った腕を掲げてみせる。
「こんな様で勝てると思うか?」
たぶん、そんなことを言いたかったわけではない。
これが私達の最期になるかもしれない。
カズマは私の顔を見て言葉を交わしたかったのだ。
「鬼殺しが何言ってるのよ。いつだって勝ってきたじゃない」
私は人差し指でカズマを差し、次いで自分を差し、ニンマリ笑う。
「あんたと私で」
「……充分だ」
カズマは唇で笑い、鬼に向き直る
そして、神経が剥き出しの手を薙刀に添え、一陣の風と化し、そこから旋風と変ずる。
一瞬にして鬼の脇へ踏み込み、身体のひねり伴った薙刀の一振り。
速い
私でさえ裾の端を捉えるのが精一杯の鋭い一閃。
黒い血飛沫がカズマの顔を染めるが、それは鬼ではなく切断された熊の頭部の血。
主を守ろうと、刃をくわえようとしたが、カズマの剣速がそれを上回ったのだ。
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