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両角鬼は苦笑しつつ踏み出そうとし、ふと天井を見上げる。
その視線の先から、男が上半身を垂らした。
容姿は人そのもの、精悍な青年。肌に直接黒い革の上着を羽織っており、首からペンダントを下げている。
見覚えがある。襟引鬼、鬼王だ。
「カズマ!鬼王よ!」
鬼王さえ倒せば、鬼の統率は乱れる。
カズマが腐泥門を蹴る前に、襟引鬼は懸垂の要領で天井に消え、再び離れた場所に上半身を垂らす。
「両角、時狂人、喜べ。大黒が殺された。もう総一郎にチクる奴はいねえ。お前らなら精神支配を遮断できるだろ。後は適当にやれ」
「心配すんな。最初から適当だ。本命しか眼中にねえ」
両角鬼は笑い、傷を負っている時狂人は辛そうに刀を鞘に収めた。
両角鬼は大剣を構え、素足となった足で巨体をこちらへ進ませる。
カズマの肩は激しく上下し、体力の消耗が伺える。
もし、仮に、私とカズマがここで死んだとしても、種は蒔いてある
それらは順調に育っており、これからも成長してゆくだろう。
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