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余計な者はいらない。私と望月さんだけいればいい。
死と隣合わせの、二人だけの世界
互いを感じることによってのみ、生き残る事が出来る極限状態。
誰にも邪魔されたくない。
望月さんが私の肩を叩き、私と位置を入れ換える。
私の前に裾が広がる。
私と望月さんの絆が形となる場所
その裾を染めているのは、あの少女の血。
不快だ。
まるで、私と望月さんの間を隔てるかのように、色濃くこびり付いている。
ここに居らずとも、自分の存在を誇示しているように思える。
私は彼女の血を吸った裾を、踵で踏みにじる。
(いなくなれば…いい)
彼女など死んでしまえばいいのだ
指輪を望月さんに返したことを私は後悔する。
いっそ、望月さんを沈めてしまえばとも思う。そうすれば、彼は生涯私の物となる。
彼女がどんな顔をするか、どれほど嘆くか、想像するだけで愉しくなる。
望月さんと、入口を挟んだ向かいに立つ哲平が頷く。
それを合図に、哲平はドテラの裾を翻して突入した。
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