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その夏奈子の目とカズマの後ろにいる真紀の目が合う。
真紀も周囲に気を配っていたのだ
傷を負っているカズマにとっては手負いの鬼といえども難敵だが、無傷の真紀にとっては手負いの鬼など敵ではない。
真紀はいつもより余裕を持ってコートの裾を踏み、残りの集中を戦況へ向けていた。
夏奈子と真紀は同じものを見ているが、情報の活かし方が違う。
夏奈子は望月をいかに守るかに思考が留まるが、真紀の思考はいかに敵を殲滅するかにまで及ぶ。
経験の差だ。
不意に、真紀の口元に笑みが浮かぶ。
夏奈子はそれを、己と同じ、一人の男性を意のままに操れる愉悦の笑みと誤解する。
もちろん、笑みの意味は違う。
もし、両角鬼がその笑みを見ていたのなら、それが千年前の宿敵、夕霧姫が勝利を確信した時にのみ浮かべた笑みと全く同じであったことに気付いただろう。
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