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【望月拓郎の視点】
俺は冷や汗混じりに携帯電話を眺める。
画面に今し方の通話時間が三秒と表示され、すぐに待ち受け画面へ戻る。
そして、再び携帯が鳴り始める。
「すごい震えのバイブレータね?二の腕までブルブル震えてる」
美奈が珍しそうに俺の携帯を見る
「違う…バイブレータなんて作動させてない…俺の震えだ」
俺は包帯を巻いた右手で左手の震えを押さえ、『夏奈子』と表示された電話を耳に当てる。
『なぜ、切ったのです?』
「いや、モシモシもなく突然スピーカーから『怨みます』と聞こえりゃ誰だって思わず切るだろ」
『言わずにはいられない私の気持ちも察してください。おいてかれるなんて、情けなくて涙が出ました』
「悪かった。ごめん」
『そう思うのなら、望月さんが駅まで迎えに来てください。あと二十分ぐらいで軽石沢駅に着きますから』
「わかった」
『…そこに美奈さんは?』
「ああ、いる」
『なら、問題です。青い牛飼っている…オから一つ飛びに字を抜いてゆくと?』
「えーと、あ・い・し・て・る」
プッ…ツーツーツー
通話は一方的に切れ、やはり携帯を持つ手がカタカタと震え始める
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