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生臭い果実
夜のまな板はいやに白く不健康そうな色をして蛍光灯を鈍く反射している
ビニールを剥がれた白魚は力なく寝そべったままぴくりとも動かない
昼間の明るさに私の言葉はいかにもうらぶれていた
唇だけが赤く意識が熟れていく
内臓はきっと白く濁って渇いているのに
無力さ 媚びる言葉
青臭いにおいを撒き散らして私事で熱を持った脳が腐ってゆくんだ
唇を出た途端温度を失くして ただ湿って白い魚になる
もう動けないよ
刃の下に身体をさらして誰かに振り下ろしてもらいたがっている
私には私が動かせないんだ 意識が熟れてしまう
膿みだけが発露して私は目を覆う
白魚が寝ている 私の眼の下に
包丁を突き立てられるような私ではないのです
110424
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