二日目

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「よし。経過は良好、あんまり激しい運動はダメだけど、それ以外は平気だ。」 午後の診察を終えて、医師はアーデレの肩をぽんと叩いた。キンブリー医師はアーデレの担当で、もちろん彼女の変化にはよく注意して診察を行っていたが、彼女に目立った変化は見られないし、伝えるべきでもないと"あの事"に関しては口を瞑っている。 「ありがとうございました。」 アーデレはキンブリーに軽く会釈した。「運動は控えますし…ジュシーの手伝いをしようと思うので、そんな暇ないかも。」 「ジュシーとはどうだい?うまくやってる?」 「ええ。」 アーデレは笑った。キンブリー医師もつられて笑ったが、少し、アーデレが気づけないくらい少しだけ、その笑顔は曇っていた。 「彼女は極度の男性恐怖症でね…私さえ近づけない。診察なんてとてもじゃないけど出来ないよ。 ― そこのところ、彼女に言っておいてくれると助かるんだけどな。」 「伝えておきます。」   アーデレが診察室から出ていった後、キンブリーは深いため息をついた。ちょうど隣りの個室でジュシーの診察をしていたシャーナン看護士が、髪をくしゃけて悶絶するキンブリーにコーヒーを差し出す。 「彼女、何て?」 「ジュシーと上手くいってるってさ。」 「そう」シャーナンは自分のつけたジュシーの診察カルテを見直しながら答えた。「ジュシーも彼女気に入ったみたいよ。良かったじゃない。」 キンブリーはコーヒーを一口飲むと、アーデレの出ていった診察室の扉をぼんやり見つめた。そしてシャーナンにアーデレのカルテを手渡すと、残りのコーヒーを一気に飲み干す。 「…何事もなければいいんだけどな。」
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